オブジェクト
オブジェクトは放置プレイと似てなくもないが、その実質は全く別物。
放置プレイは一応M女の人格を認めているが、オブジェクトはあくまでオブジェクトであって、それは単なる物体/置物に過ぎない。
使用法としては足置き、肘掛け、テーブル、等身大人形、ただの飾り、その他何でもいい。
物体になり切らせるので必然的にしばらくは放置することになる。
もちろん、その間に一切の会話はない。
よって鞭やロウソクのように物理的に責めるわけではないが、精神的にはかなり有効である。
というよりも、オブジェクトとして過不足無く用いることができるのであれば、そのレベルにまで調教した主を誉めるべきだろう。
と同時に、主の命令に忠実に従い、命令を解かれるまではひたすらモノであり続けるM女も大いに誉めるべき。
ここまで来れば既に二人の世界は出来上がっていることと思う。
そんな二人に今更何を言うことがあろう。
個人的には四つん這いにさせて読書時の足置きなどなかなか使い勝手が良いと思うが、オブジェクトと言えば昔あるM女から聞いたこんな話を思い出す。
それは短編小説でタイトルと作家名も聞いたが、もう二十年くらい前のことなので、覚えているのは内容のみ。
あらすじは以下の通り。
昔々、遣唐使だったか遣隋使だったか、派遣された一団の内の何人かが帰ってこなかった。
時は流れ、帰って来なかった内の一人の息子が遣唐使として大陸へ渡ることになった。
無事大陸に到着し、旅の苦労をねぎらうべく宴会が催された。
宴の途中、急に燭台の一つが揺れ始めて止まらない。
男が燭台にムチを打っている。
よくよく見れば、それは人間燭台であった。
宴が終わり席を立つ遣唐使たち。
すれ違いざま、彼は揺れていた人間燭台が自分の父親であることに気付く。
夜中、歯を抜かれ、全身に奇怪な入れ墨を施された父親を助け出す彼。
しかし、日本に連れて帰る途中、父は船から身を投げてしまった...
この話がSMの範疇に入るのかどうかは知らないが、少なくとも俺がここで言うところのオブジェクトの概念そのものである。
ちなみに、英語では an object of pity という言い回しがあるが、これは「あわれみやもの笑いの対象」といった意味で、まさにSM的なオブジェクトと言える。
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